キンプリ感想(後)

それでは感想を書いていきたいと思います。何ぶんかなり前のことで記憶の劣化も激しいですが、視聴直後でも多分何も覚えていなかったと思うのでそんなに変わらないと思います。それではいきます。

 

まず最初に言っておくと、キンプリは上映館が頭おかしいんじゃねぇの?ってくらい少ないです。 都道府県で言うとキンプリが上映されてない県の方が多いくらいだと思います。 幸運にも北海道では一箇所だけ上映している館がありましたが、大きめなシネフロとかユナシネとかじゃなく、割合ニッチなスガイビルのディノスシネマです。ここら辺地元民じゃないとわからないと思いますが、つまりオタク御用達みたいな、そういうアニメ作品を多めに取り扱ってる小さめの映画館だと思ってください。

 

ちなみに上映時間も少ないです。昼12時と夜7時。何がやりたいんでしょう?僕にはよくわかりません。

 

まぁ愚痴はさておき、当日の話に移りましょう。なるちゃんたちの成長した姿に期待とかを胸とかを膨らましてスガイビルに向かった僕は、上映時間よりだいぶ早く着いてしまいました。

 

とりあえずチケットだけでも購入しておこうとカウンターへ。店員はお姉さんでした。……おっと、こいつはいきなり僕の精神力が試される場面の到来です。優雅に、かつエレガントでブリリアントに。「キングオブプリズム一枚お願いします」ただそう口にすればいいのです。できるだけ低く、山岳に響き渡るテノールで。ここで少しでも動揺を見せれば、人目を避けて一人でホモ映画を見に来た潜在的ホモとして目をつけられかねません。余談ですが僕の母校である高校からは男子売春の罪で逮捕者が出ています。お世話になった男の先生でした。だからどうした。落ち着け!

 

「キングオブ、プリズム……一枚オネッシャス」 これだけの言葉を発するのにいったいどれほどのオーラ力が消費されたでしょう。お姉さんは淡々と手続きしてくれました。僕はハイパー化してゲオディノスをぶち壊してやろうかと思いました。

 

ですが、そんな僕の憤りなどチケットと同時に手渡された来場者特典の前には些細なことです。

 

クリアファイルでした。まぁアニメ映画の特典としては、安価で大量に作れ、来場者としてもそこまでかさばらないためありがたい妥当な選択でしょう。

 

ファイルオモテ?面には大きくプリントされたオバレ(主役の三人のユニット名の略称。それぞれの特徴は前記事参照)の三人。カッコいいですね。ウラ面には白スーツの正装を着込んだ主要キャラ五人…………の首がない。

 

ない。

 

よっぽど僕の首が取れた方がマシでした。イケメン揃いのはずの五人組は顔から上がスケスケで誰が誰かもわからないというか彼らが一体誰なのかさえわかりません。そもそもそれが主要キャラたちだというのも僕の想像なので、ひょっとすると首から上はそこらへんのオッサンから生えてるものがくっつくべきなのかもしれません。

 

ここにきて、初めて僕は不穏なものを感じ取りました。この映画は何か違う。ただ腐女子がハァハァするためだけの中身スカスカのアニメ(偏見)じゃない。

 

首なしファイル。これは何らかのメッセージでは?

 

そう、おそらくは…殺害予告。

僕の首を刈り取ろうという死神からの予告状。

 

戦いの予感を胸に、僕はディノス二階のレゲーセンターに行きました。ダライアス外伝めちゃくちゃ楽しかったです。

1クレ50円という非常に良心的な価格でかつての名作たちを楽しんだ後、僕は再び決戦の地に舞い戻りました。上映室の前のソファーに陣取りつつ、周囲を索敵。戦場ではクリアリングとリロードを怠った者から死んでいくのです。

 

おぉ……客少ねぇ。

 

僕含めても5、6人くらいでした。さすがは女児向けアニメの続編の女性向けアニメ。どこを購買層として見込んでいるのか皆目見当もつかないだけに客層もバラバラです。

 

意外だったのは、僕以外全員女という精神的に大変ありがたくないハーレムを覚悟していたのですが、男性も結構いました。やはり女児向けアニメが元なだけにそのファンが見にくるのでしょう。僕もそうですし。ただ本来ファン層として想定していてプリリズを見ていたはずの女児は一人もいませんでした。まぁ夜7時だし当たり前か。12時でも一人もいねぇだろうけどな。

 

とりあえず、クリアリングは完了です。若干世界から隔絶してるタイプの客が目立ちますが、敵に回るようなことはないでしょう。上映中静かにしていてくれれば僕的には問題ありません。

 

若干腹は減っていましたが、ひたすら待ちます。男一人で映画館に来てポップコーン片手に女性向けアニメ映画を見るなんてことをしたら、おそらく僕は僕という存在を保てず自壊します。その結果僕を中心として編まれていた因果律に狂いが生じ、どこかにいる主人公に転生して空から降ってきた美少女とイチャコラし始めたいです。そういうセカイ系ラノベが好きな時期がありました。

 

結果としてはそんなに待つこともなく、係の人が開場を報せてくれました。僕と女性二、三人、男性四、五人がそそくさと劇場の中に入っていきます。みんなどこか恥ずかしげな顔をしていたように思います。それはもちろん僕も例外でなく、おそらくあの時、僕らは暗黙の内に戦友としての誓いを交わしていたのだと思います。

 

ちょっとここにきたことを後悔し始めたけど、でも楽しもうゼ!

 

僕は彼らに目でそう訴えました。誰とも目は会いませんでした。

 

自由席だったので適当に選んだ真ん中らへんの席に着きます。まぁ当然ながら空席ばかりなので、自由席というか、自由列みたいな感じでした。マンション一階層分全てを使う富豪の気持ちがわかったような気がしました。

 

席に踏ん反り返ってスマホをいじいじ。現代人にスマホは必需品です。ガラケー時代に一体何をして暇をつぶしていたのか、もはや思い出せません。

 

いじいじ。いじいじ。きゃっきゃっ。いじいじ。

 

オォン?

 

気づくけば僕の斜め前の席に、いかにもと言った感じの腐女子っぽい姉ちゃん二人組が座っていました。彼女らはデュラハンクリアファイルを見ながら何事かを囁き合い、暗闇の中、周囲の静寂を恐れるように耳元で睦言をつぶやきます。仲睦まじいその様子は平時であれば笑顔と共に迎え入れるべき光景であり、不覚にも僕は少し興奮しました。

 

……チクショウ!やられた!ずいぶんナメた真似してくれるじゃねぇかこのアマ!

 

そう、人の少ない映画館、しかも彼女たち以外の客はすこぶる静かなため、彼女たちの発するわずかな物音も僕の耳にはよく聞こえるのです!さらには位置が僕の前!僕には彼女たちがはしゃぎ合う様をスルーして画面だけ見続けるなんて高等技術はまだ使えません!

 

そんでもって、顔がアレならまだしも、彼女たちなかなか可愛いんです!顔がアレなら僕は憤然とした様子を隠そうともせず席を立って別の場所に移ったでしょうが、それも封じられました。顔がアレなら助かったのに!クソ、顔がアレなら!

 

僕は早々に諦め、このキンプリ鑑賞を早く思い出にすることを決めました。思い出にしてしまえば傷つくことはありません。人を傷つけるのは常に過去の生傷なのです。

 

うん、こういう客もくるよね。だって女性向けだもんね……

 

まぁ結論から言うと、僕は多分上映中彼女たちより断然はしゃいでいたので本当に申し訳なく思います。ごめんなさい。

 

さて、僕が諦めの境地を拓き菩薩に至ろうとしていた頃、スクリーンでは映画泥棒が踊り狂っていました。見るたび思うけど、あのポップコーンが顔面についているというか顔面がポップコーンな彼が驚いた拍子に散らばるポップコーンは片づけが大変そうだ。

 

映画泥棒さん方の愉快な茶番が終了すると、いよいよキンプリ上映です。僕も電車賃とチケット代の元は取ろうと気合を入れ直します。

 

しかしながら、早速本編が始まるかと思いきや、何かよくわからんコーナーが始まりました。週替わり応援メッセージとかいうものです。あぁ…この手のやつにはよくありますよね。コレクター魂をくすぐるというか、全部見たい!と思わせて毎週来させる魂胆です。絶対行きます。

 

喋っていたのは新キャラでキンプリ主人公の一条シン君と、同じく新キャラで特に肩書きのない太刀花ユキノジョウ君です。変換しづらっ。

 

シン君の声は主人公らしく元気発剌としたまっすぐでちょっと耳障りでうるさい感じ、ユキノジョウ君の声は艶があり色っぽいカマホモな感じ。なるほど、キャラの特徴がよく出ていますね。

 

でも正直こいつらのことなんて、前情報もあんまり見てない僕は興味ありません。シン君が高校入学前は中学サッカー部でレギュラーの座についていて、最後の大会が終わった後はやることがなくなり退屈を感じているなんて知りません。ユキノジョウ君が歌舞伎の家元の息子で女形を主にこなすほどの美丈夫であり、より技術を磨くためにプリズムスタァを目指していることなんて、知りませんよ!全然!

 

二人の挨拶が終わると、いよいよ待ちに待った本編の開始です。さぁ、どう出る?何を見せてくれるんだキンプリ。

 

流れ出すのは聞き覚えのある音楽。こ、この曲はまさか…!?

 

オバレの三人のライブシーンです!冒頭からいきなりライブシーンをぶち込んできました!曲目はたしかアスレチック・コア。レインボーライブ最終話を思い出しますね!

 

実に楽しそうに踊るホモ三人集。レインボーライブで演じたドロドロの愛憎劇(比喩ではない)を払拭するように、軽やかなステップで氷上を舞い踊ります。 正直彼らのステージをまた見られただけでも、この映画を見にきた価値はありました。懐かしい…本当に懐かしい。

 

ですが、まだ満足するのは早い。プリズムショーの見所はプリズムジャンプにあります。

 

今更ながらプリリズシリーズ初心者向けに解説すると、プリズムショーとはフィギュアスケートをやりながらダンスして歌を踊るという気の狂った競技であり、プリズムジャンプとはプリズムショーの華、クライマックスに唐突に訪れる謎時間です。パチンコのリーチ演出みたいなものだと思ってください。そこではプリズムスタァたちが狂気乱舞(誤字ではない)し、世界観をぶち壊さんと物理法則の枠を超えて宙を舞い、天を駆け、子供を産みます。もう一度言います。子供を産みます。

 

さて、説明はそこそこに本編へ。レインボーライブの最終回から約1年半が経過し、その分成長したオバレの三人が見せるプリズムジャンプとはいかほどのものか!?

 

自転車。

 

僕から言えるのはそれだけです。ここから先は君自身の目でたしかみてみろ!

 

……まぁ、それだとあまりに不親切なので、ネタバレにならない程度に少しだけ解説を。

 

自転車。二人乗り。松崎しげる。愛の言葉。×3。ママチャリ。弱虫ペダル

 

さぁ、これらの言葉の意味が知りたくばさっさとキンプリを見に行きなさい。早くしろ。さっさと俺と同じ思いを味わえ。

 

失礼、あまりの衝撃に言葉が乱れました。プリズムジャンプはまだまだ続きます。というのも、プリズムジャンプは連続で出すほど得点が高いのです。フィギュアと一緒ですね。作中で確認された最高記録は7連続で、7連続ジャンプすると氷の山がバラに包まれて異世界人が全ての力を使い果たしこの世から消えかけます。プリリズはそういう世界です。

 

裸。

 

もう僕の口からは何も言えません。全裸です。心が全裸です。魂レベルで全裸のホモに抱かれました。なんだアレは、なんなんだアレは。

 

僕の動揺はさておき、ちゃっかりオバレのライブを見に来ていた一条シン君。彼の初めて体験するプリズムショーがこれというのは本当に同情しますが、ともかく彼は全身で感じたプリズムのきらめきにひたすら打ちのめされ、可哀想に視覚に異常をきたします。

 

おまけに頭までおかしくなったのか、ライブからの帰り道に自転車に乗りながら川の土手からETジャンプします。地球の重力から魂を解放したかったのかな?

 

そんな彼の奇行の一部始終を見ていたのは、金髪ロン毛でロリコンザコンのどうしようもないイケメン、氷室聖さんでした。読み方は自分で調べよう。

 

実は偉そうな人だった氷室さんに導かれて、シン君はプリズムスタァ養成所、エーデルローズの門を叩く…というのが、キンプリの冒頭の流れです。

 

……本当はこれから先に起こったことも詳細に記したいのですが、これから先を書くとどうしてもネタバレになります。僕はネタバレを許さない性質なので、それはしません。 なので、次回予告風に紹介します。

 

一条シンはプリズムスタァへの道を歩み始める。共に高め合う数々の仲間(全員ホモ)、プリズムのきらめきを感じさせるシンに自らの過去を語るオバレ。シンを惑わせる謎の美少年。立ち塞がるは実力至上主義を謳う巨大組織シュワルツローズ、そしてカヅキの元に現れる強大な鋼のsix pack、二人の激戦が終わる時、物語は急転直下の中、本当の意味で幕をあける。オーバー・ザ・レインボーの決断とは?そして一条シンが目指す未来とは?女たち(とヒロ様)の涙雨が降る夜に、シンの叫びがこだまする。次回キングオブプリズム、俺たちホモダチ。君は、刻の涙を見る。

 

だいたいこんな感じです。さぁ、気になった方は今すぐ劇場へGO!

 

長くなりましたが、これで当日のお話は終わりです。全然感想じゃねぇ!という方向けに、簡潔に感想も添えます。簡潔というには非常に長くなりましたが気にしないでください。

 

キンプリ、想像以上でした。いやむしろ想像とかそういうものが全て無意味に感じる面白さでした。おそらくキンプリをめちゃくちゃ期待して見に行った方でも、さらにその期待の上をいかれたことでしょう。

 

僕は侮っていました。キングオブプリズムという作品、ではなく、製作陣とプリティーリズムという作品をです。

 

プリティーリズムシリーズは約2年前にシリーズ展開をやめ、今その流れはプリパラという次世代に受け継がれています。プリリズとプリパラは監督も違い、似てはいても、やはりどこか違うものです。そして商業的にはおそらくプリパラの方が成功を収めています。

 

つまり、プリリズは負けた。そう感じざるをえません。もちろんどちらの作品は素晴らしく、プリリズもかなり売れた方ではあるのですが、それでも商業作品で、しかも女児ゲームの販促アニメという性質上、より売れたものが勝者であり、シリーズが一新されたということもあって、プリリズにはどこか負けコンテンツというイメージが付きまとっていたように思うのです。

 

プリパラの映画でプリリズ時代のライブシーンを総集編にして流すというものがありましたが、あれを見たとき、僕は嬉しさと共にどこか悲しさも覚えました。プリリズはもはやプリリズ単体では売れないコンテンツになったのだ、と。プリパラという売れ筋の作品の力を借りて、初めて成立する作品になったのだと、そう感じたのです。

 

ですから、今回キンプリをやるという話を聞いて、僕としては「最後の花火」みたいな寂寥感が先に立ちました。これで最後だから思いっきりバカなことしよう!みんな笑ってくれ!みたいな、そんな後ろ向きなカラ元気です。

 

だから、視聴にもあまり前向きになれなかった。プリリズを本当に終わらせてしまうのだと、そう感じたからです。

 

ですが、実際にキンプリを見た今、それは全くの間違いだったと気づきました。

 

プリリズは終わりません。少なくとも、それを求めるファンがいる限り。

 

詳しいことはわかりませんが、キンプリは予算的にとても苦しい中で製作されたそうです。当然ですね、社会的には終わったコンテンツなのですから。

 

それでも完成にこぎつけたのは、プリリズを心から愛するファンと、何より製作陣との方々もプリリズが大好きだからだと思うのです。

 

キンプリからはそんな熱をビシバシ感じました。まだプリリズは終わらない。製作陣が全滅するかファンが全滅しない限りは作り続ける。そういう意思が、脚本から、映像から、腹筋から何から全てのものから伝わってきました。

 

だからキンプリは素晴らしいのです。見ている間、僕はひたすら笑っていましたが、ラスト近くなるととても悲しい出来事が起こります。そこで彼が泣き、僕も同時に涙をこぼしました。泣いている彼の姿があまりに弱く儚かったからです。

 

画面の中も悲しみに包まれていました。見ている僕の心を映したようでした。

 

そこで、彼が現れたのです。彼は歌い、踊り、プリズムのきらめきを取り戻そうと必死にプリズムショーをします。

 

彼の姿に最終話のなるちゃんを見たのは僕だけではないはずです。

 

そんな彼の姿を見ていると、僕は泣くことが無意味だと気づきました。

 

だってプリズムのきらめきはまだ終わりません。必ず彼が繋いでいくのです。

 

だから、僕は笑顔でそのライブを見ました。いい曲でした。

 

そして、なんとなくわかったのです。プリリズはきっとこうして続いていくんだと。プリリズという作品が忘れられても、きっとプリズムのきらめきを受けた誰かがまた新しい「プリリズ」をつくるのです。

 

だから、僕もまた誰かにプリズムのきらめきを伝えようと思い、こうして文章に起こしました。僕は文章を書くくらいしかできないですので。

 

これを読んだ方がプリリズに興味を持ってくれて、キンプリを見て、プリリズも見てくれたら本当に光栄です。きっとあなたを満足させるものが待っていると思います。

 

本当に長くなりましたが、僕の感想はここで終わりです。 それでは、お目汚し失礼いたしました。